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Think&Said to Myself

日々の日記と思いをミク●ィより赤裸々に(笑)綴りますw

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善意と悪意のあいだで

ちらちらと様子を窺い、給湯室で彼が1人になったのを確認してから、何食わぬ顔で私もマグカップ片手に給湯室に入っていく。

なんでもないような顔で、自分のマグに緑茶を注ぎながら、「先生」と切り出す。

度のきつい近視のレンズの焦点が、私に合わされる。


「沖縄の下見って、やっぱキツいんですか?」

『・・・行くん?』

「いちお、行くって返事はしてるんですけど、キツいよって話聞いて、どうしようか迷ってるんです。やめるなら早く決めないとキャンセル料掛かってきてしまうし・・・」



遡ること3日前。修学旅行の下見に行くメンバーに私が入っていると知った、お局1号が私に言った。

『かなり歩かなあかんしな。だいぶしんどいからよう考えたほうがええよ。』

「もし行って足を引っ張ったり、迷惑になるようなら辞退しますが・・・やっぱり行くのは厳しいですか」

『いや、迷惑とかそんなん違うけど。体力勝負やからさ』


『まぁ、良い方向で考えて欲しいとは思ってるけどな。行ったら行ったで楽しいやろうしな』



真意をはかりかねていた。
彼女は悪い人ではない。言動はきついし、人の悪口も言うけれど、けど、悪人というわけではない。

私は好かれているのか、嫌われているのか。 おそらくそのどちらでもないのだろうが、今回の発言は、本心で気遣ってくれてのものなのか、それとも暗に来て欲しくないといっているのか・・・

判断がつきかねた。


実際に行って、自分にいけるところと行けないところ、出来る仕事と出来ない仕事、ホテルや空港に移動に支障のあるものがあるかないか、そういうところを自分の目で確かめてこようと思ったから行くと行った今回の下見だったが。


体はもう昔のようには行かない。

最後にスーツケースを持って歩いたのは高校二年の短期留学以来。 当時はエスカレーターも乗れたし、飛行機のタラップも余裕だった。少々の段差ならスーツケースを持ち上げるのも何ともなかった。

もちろん、1日数時間歩くのだって、何ともなかったのだ。


しかし、今は。

休みを挟まなければ1時間半も自信がない。 
坂だらけのS市内を毎日チャリと徒歩だけで生活していた大学生時代と違い、坂のない平坦な土地に住み、更に車を使うことの多くなった今は、太腿や下腿の太さも一回り小さくなって、筋肉量も減少した。


自分のせいで誰かに迷惑は掛けたくない。


いつもいつも私の芯にまでしみこんでいる考え方。


だから今回だって、もし私を連れて行くことが迷惑になるのなら迷惑だと行って貰ってよかった。



でも大人は本心を隠す。



そこで、相談しようと考えたのが、新任の頃学年主任だった、M先生だった。
今年、同じところに修学旅行にも行っているから、状況もわかりやすいだろうと思ったのだ。




『ガマ(防空壕跡)はやめといた方がええやろうな。足場が不安定やし、暗い。』

『周りの迷惑とかより体が心配や。帰ってきたらすぐに新学期やで。俺、下見のときと本番のDVD持ってるから、それ見たらだいたいどんなところでどんな流れかわかるやろう。暑いさなかに、体に負担を掛けてまで無理することないで』


『自分はよ、その言葉(お局の)を自分を思ってと思ってるんか、それとも『来んな』的な感じなんか、どっちや思ってるん?』


「それが、正直判断しかねてるんですょー でも善意でやって思いたいですけどね・・・」

『もしな、自分が善意でやって思われへんねんやったら、行くのはやめといた方がええ』

「まだもう少しあるんで、じっくり考えてみます。」

『おぅ、で、体の方はどうなん?』


「いやぁもう、悔しいっすよぅ 去年の今頃からサロンパスデビューしちゃってねー、帰ったら『ぺたぺたぺた、ふう』ですわー


主任独特のいたずらっぽいニカニカした笑いを浮かべる。

『介の字貼り??』

「いや、介の字貼りはひとりで出来ないんで、ハの字貼りと、ひらめ貼りですねぇ。あ、あと、はさみ貼りも


かっかっか、と笑う声が大きくなる。


『あ剥がし忘れ・・・』

「ぇえ嘘  ・・・・ってあるわけないじゃないですか

『とかあったらおもろいのになぁ・・・』


かっかっかと笑い続ける主任。。


『正直、今迷ってるやろ。 俺はやっぱり(生活の)糧を得られるようにって考えてまうから、役所関係の仕事で
よ、この仕事をしてるときに受けて、スライドしてくってのがええと思うけどなぁ。 この先、車椅子とかになったときに、公立の中学校は働ける環境とは言われへん』



判ってる。判ってる。。

でも先生、せめてもう少しだけ頑張らせて。まだ私、教師を辞めたないんよ。 
一生は無理でも、まだ私『学校の先生』でおりたいねん。


転職を勧める人が増えていく。主任のように純粋に体を心配してくれての人もいるけれど、中には、あんたにふさわしい仕事に変わってさっさと辞めろ、と思っている人もいるだろう。


理解してもらうのは難しい。 実際できることも限られてきているのだ。
だからいつかは、この現場を去らなければいけないだろうこともわかっている。


でもそれはまだ、今じゃない。私だって何も考えてないわけじゃないよ。



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