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Think&Said to Myself

日々の日記と思いをミク●ィより赤裸々に(笑)綴りますw

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左手

前夜は、なかなか寝付けなかった。

その理由が、「明日が楽しみで興奮して眠れない」という小学生の遠足前夜のようなものならまだ幸福感もあろうが・・・    実際はその真逆に近い。


明日会いたくないなぁ・・・気ぃ重いな~

出るため息は、幸せでなく悲壮に満ちていた。


結局24日は、架空の仕事を作り上げキャンセルした。 初めてついた嘘であった。人手が足りない仕事に借り出され、新人は断りきれないとしゃあしゃあとメールした。


罪悪感と後ろめたさが一緒に追いかけてくる。


24日の方をキャンセルした理由は、2日間会うのが精神的に負担が大きかったというのと、親友に「家に来ないって事になっても日をまたいだら、絶対来ないっていう保証はないからやめといた方がいいんじゃない」という助言のためである。



25日。
様々な人でごった返す駅のターミナルビルに私はいた。

去年までなら、年末のバラエティ特番でも観ているか、スーパーかコンビニに買出しに行っているかのどちらかが関の山だ。


何しろ会うのは4年ぶりなので、一応変化にも対応できるようにとお互いの服装は前もって知らせてあった。

いつもどおり、リーバイスのデニムにグレーのコートで行くと告げると、おしゃれをしてきてもいいのだという趣旨の返事が返ってきた。


その瞬間、私の心はまたひとつ、冷静になっていく。

デニムは「おしゃれ」ではないんだ・・・

確かに出会った頃から、私服で彼がデニムを履いているところは見たことがない。モノトーンカラーのパンツばかりだ。

もしこの日、超高級なレストランに行くとかであったなら、デニムはちょっと・・・という思いもわかるし、私もそれ位のドレスコードはわきまえている。
でもこの日は駅で待ち合わせて、駅周辺でご飯でも食べて、あとはそのときの気分でってな感じだったので、デニムじゃなくてもいいんだ的な発言は腑に落ちない。


自分が絶対履かないくらいだから、きっと誰に対しても「デニム≠おしゃれ」という考えがあるんだろう。

それは個人の自由だけれど、だからってそれを遠まわしに押し付けるようなことはされたくないし、何よりもうすっかり彼氏気取りでそんな台詞を言われることに強い抵抗を感じた。


確かにデニムやジーンズは、大昔は炭鉱での作業着としてルーツがあるくらい、おしゃれとかけ離れたものだったけれど、今は違う。
デニム1本取ってみても、500円のものからウン十万するものまで色々だし、人によってはコダワリがあるものなのだ。 

昔から遠足などの私服で行ってもいい日にはデニムしか履かなかったし、初デートのときもデニムだった。同窓会の時だって。

すごく小さな癖でさえ覚えているあなたが、それを覚えてないわけないよね?
なんか、私の好みを否定されてる気がしたよ。


無論、付き合いが長くなれば、自然と趣味や嗜好が似通ってくることもあるだろうし、相手への思いが強ければ相手の好みに副いたいと思うことも出てくるだろう。

でも彼は今、そこまで思い入れの強い相手ではないし、何より自分の好きな服装を否定されるのはしんどい。

それが時々であれば、相手の意に副う事も可能だろう。
しかしもしこれから、関係を発展させるとなった場合、会う回数が増えれば自分の好きな格好ができないのは辛いし、だからといって、デニムを履くたびに(あぁ、こんなの好きじゃないんだろうな)なんて考えるのは疲れる。


ぶっちゃけて言ってねぇ私だってあなたの服装のセンスは昔から好きになれない苦笑
けれど、それに関して何も言わないのは、あなたも何かしらの信念なり考えがあってその服を選んでるわけだし、個人の趣味嗜好をどうこう言う権利がないからだ。余程、世間からズレていてその人自身の風評に関わる・・とか、服に関して意見を求められたとき以外はね。。


色々考えて出た結論。
なんで私があんたの為に自分を犠牲にして、おしゃれしなあかんねん

元々おしゃれって、テンションがあがるものの筈よね。
好きな人に見てもらえるって思ったら尚更苦にはならない筈よね。。

あなたにおしゃれしてきていいって言われたことが、ごっつい苦痛なんだけど・・・


と言うのが、本音なのである。上から目線で言われる理由もないではないか。


結局その発言に対しての直接の返事はぼやかした。


誤解のないように言っておくが、スカートも嫌いではないし、スタイリッシュなパンツスタイルも嫌いじゃない。


  

結局、宣言どおりにデニムで現れた私に、髪型を変えた私に、彼はそれに対するコメントはゼロだった。(まぁ男性には珍しいことではないけれど)
だから、私の服装に対してどう思ったかは知らない。

彼はと言えば、すっかりオッサンに片足を突っ込んでいた。実年齢より数歳は老けて見られるだろう。
本人も多少それは気にしているようだったが、その原因がめがねにある・・ということまでは気がついていないようだ。

(気にしてるなら、尚更ふけて見えるフレームじゃなくて、もっと若者向けのにすればいいのに)
と思ったが、これも学生時代からずっと同じテイストのフレームなので、これまた彼のポリシーなのかと言わずに置いた。


特別な感情が薄れているせいも大いに関係しているのだろうが、肩と肩が当たりそうな距離で歩いていても、その形のいい喉仏を見ても、彼の苦手な野菜を遠慮なく横取りして平らげているときも私の拍動は至って落ち着きを払っていた。

それが物語る。
すっかり「気心の知れたただの友達」であることを。



飲食代は1円単位まで割り勘にした。
クリスマスだし・・・とプレゼントを買ってくれようとするのを、やんわりと制した。


私はあなたとこれ以上親密になろうとは考えられない。
だから中途半端に「恋人ごっこ」をしてはいけないと思った。 

奢ってもらうことも、プレゼントを貰うのも、すべて先を期待させてしまう。
それは絶対にダメだ、と思った。


彼が私に対して、はっきりと好意を口にしたり、これから望む関係について明言してくれたなら、こちらもきっぱりと「ただの友達でいたい」と告げられたのだけれど、どうも彼は、そういうところは煮え切らない。

『はっきり言わなくても察してほしい』というのが彼の希望らしいが、それって、相手が私でなくても都合の良い願いだと思う。


世のバカップルのように頻繁に言うことは必要ないとは思うが、自分が相手をどう思うのか、これからどうして行きたいのか等、ここはという要所要所の場面ではきちんと伝えることも必要だと思うのだ。

でないとやっぱりわからない。
それを非言語で表現し、なおかつそれを相手に理解してもらおうと思えば、相手にのみ感覚を研ぎすませろっていうのは、何か違う。
自身もそれを相手に確実に伝えるためのより高い表現スキルが必要だし、どうしても口頭で言えないならば、非言語で伝えられるよう、本人も努力すべきだ。

長いこと一緒にいて、話さなくても考えていることがお見通し、という間柄ではないのだから。



結局することが尽きてしまった私たちは、終電の2時間も前に解散になったのだが、改札で見送っても寂しいだとか、もっと一緒にいたいだとか言う感情は、ついぞ湧いてくることはなかった。


彼が不自然に切符を持つ手を見ていて、ペンやフォークを握る手を思い浮かべ、

あ、私は彼が左利きだと言うことも忘れていた・・と気がついた。


私の中で、結論は固まってしまっていた。


帰りの地下鉄の中、ケータイが振るえ、画面を見たら無邪気に次を匂わせる文面がそこにあった。


私も無邪気な振りをして、話題を180度変えた。


ごめん、やっぱり戻れない。


そう心で囁きながら、まったく関係ない話ばかり綴られた画面の、送信ボタンを押した。
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